北米のゲーム業界は想像以上に厳しかった — 現地で感じたレイオフの波

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どうもお久しぶりです。ちょうどカナダ・トロントに来てからおよそ8か月目に突入するところで、半年間の語学学校での英語漬けも終わりました。英語力に関しては、私が目標にしていたCEFR C1にはぎりぎり到達しませんでしたが、以前と比べてかなり英語力は伸びたと感じており、半年間集中して英語を頑張った甲斐はあったと思います。

さて、半年間集中して英語を学習している間も、北米のゲーム業界の情報収集は必須だと感じたため、現地で開催されているゲーム業界関連のイベントを片っ端から調べました。私は以前大阪に住んでいたのですが、大阪と比べても勉強会や交流会があまり活発ではないような印象を受けました。というのも、私が住んでいるトロントにはあまりコンソールゲームの会社がなく、どちらかというとモントリオールに本拠を置く会社の支社が多いのではないかと思います。

トロントの代表的なスタジオ

そんな中、IGDA Toronto が主催している Meet & Mingle というイベントを見つけました。このイベントは月1で開催されており、大体月末に行われていました。IGDAは International Game Developers Association の略で、NPO法人となります。現地の状況を知るために、何度か足を運びました。 ※実は日本にもIGDA Japan 国際ゲーム開発者協会日本という団体が存在しています。

このイベントに来ていた人は、6割が業界関係者、3割が学生、残りが他業界というような感じでしたが、ほとんどの人が仕事を見つけるためのコネクションづくりを目的に来ている印象がありました。実際に話した人の半分はレイオフに遭って仕事がなく、帰国を検討しているという話を多く聞きました。

また、学生の場合は就職事情が日本とかなり異なっており、学校を卒業してから就職活動を始めるのが一般的とのことでした。日本と違って「新卒採用」という制度がないため、募集が出た際には業界経験者と同じ土俵で競うことになり、業界人とのコネクションがかなり重要になってくるようです。他にも、企業が開催する「WHO'S NEXT?」のようなイベントで受賞し、インターンシップを勝ち取り、そこから内定を得るという道もあるそうです。

Ubisoft Toronto NEXT

しかし、通年であれば採用されるはずが、そうしてインターンシップを勝ち取っても、残念ながら予算の都合で採用されず、業界入りができないという厳しい現実も目の当たりにしました。もちろん日本を出る前からレイオフの話はよく聞いていましたが、想像以上に厳しいようです。

もちろん全く募集がないというわけではありませんが、日本のように「3Dアーティスト募集!」「背景アーティスト募集!」という表現ではなく、もっと具体的な業務内容で職種を募集している場合が多く、たとえば「Tool UI Designer」といった、DCCツールのUIデザインに特化した職種まで存在します。そうなると、ものによっては自分のスキルが全く当てはまらないということもあります。

いい点もありますが、このような状況では、募集数は多くても実際に応募できる職種はほとんどないということが多いです。 ただでさえ難しい状況に加えて、欧米での就職活動でさらに困ることは、「連絡が全然来ない」または「非常に遅い」という点です。応募してから3か月後に突然連絡が来るということもざらにあります。

さらに、この募集数の中には、いわゆる「おとり募集」も含まれているそうです。これは企業が実際には募集していないにもかかわらず、求人を出すことでカナダ政府に対して「業績は順調です」とアピールするためで、不動産の「おとり広告」のようなものが存在しているとのことです。

こういったレイオフの状況は、実は2022年ごろから始まっています。というのも、コロナ禍ではゲーム需要が急増し、多くのゲーム会社が新しいプロジェクトを立ち上げて開発を進めていましたが、いざリリースのタイミングになると巣ごもり需要が落ち着き、思ったほどゲームが売れず、スタジオが閉鎖されたり、リスクのあるプロジェクトが中止される事態が起こりました。さらに、生成AIの登場によってIT業界で大規模なリストラが進み、その影響がゲーム業界にも及んでいます。 マイクロソフトが9,000人のリストラを決定したのも記憶に新しいです。

米マイクロソフト、従業員9000人を削減 IT業界でリストラ進む

実際、2025年7月2日には、Blizzard Entertainmentで100名以上、Raven Softwareで20名、ZeniMax Onlineで164名と、多くのMicrosoft傘下のゲーム会社でレイオフが実施されています。その他の会社も含めると、今月だけで20社以上のゲーム会社がレイオフを行いました。

しかし、そんな中でも新しい職種が登場しているようで、先日「Senior AI/Gameplay Programmer」という新しいポジションの募集を見つけました。

レイオフの波に直面しながらも、業界が新たな転換期を迎えている状況なのかもしれません。

もし、現在海外就職を夢見て欧米にワーホリで行こうと考えている方がいましたら、いったん立ち止まって状況を見極めるのも一つの手かもしれません。


話は変わりますが、こうした状況もあり、現時点での就職活動は現実的ではないと判断し、私は就活を進めつつ、フリーランスのテクニカルアーティストとして活動を開始することにしました。

トロントからのリモート業務にはなりますが、現在お仕事を絶賛募集中ですので、ご相談がありましたらぜひ気軽にお問い合わせください。 止まっていた個人的なプロジェクトも、これを機に再始動させていこうと思います!